飲食にも関わる仕事が多く、実にさまざまな店に足を運ぶ機会があるが、本当に好きな店は人に教えたくないものである。神楽坂駅斜め前にあったこの焼き鳥店は、実は長年この町に住んでいるにも関わらず、ここ3年ぐらいのおつきあいである。ちょっと入りにくいかなという印象であったが、一度入ってしまえばその遠慮も吹っ飛ぶ。
折り目正しく、職人気質のご主人とやさしく機敏な奥様の二人で経営されている。
仕事で一区切りついた、長期出張に出かける、あるいは帰ってきた・・・とにかくホッとしたいプライベートタイムに利用させていただいてきた。
通っている間に会話も少し交わすようになり、ご出身が新潟県の魚沼であることがわかり、ますます親近感が涌いてきた。・・・そんなところへ、「店を閉めます」というおしらせ。そして本当にこの3月31日をもって、このお店は閉店をされた。写真は最終日のご主人夫妻と玄関のちょうちん。最終日らしく、18時からずらりお客様がカウンターに坐っておられた。
きっと皆さん店の最後を名残惜しみながら、焼き鳥の串をほおばっておられたことと思う。
「いやー。やっぱ年とってくると、足腰がしんどいんですよ。
ずっと立ち仕事してきましたんでね。ちょっとゆっくりしたいかなと思いまして。勝手いってすみませんね」とおっしゃったご主人の言葉が思い出される。
ひとつの仕事を長年続けることは本当に大変なことだ。
焼き鳥一筋にがんばってこられたこの半生に、近所の客のひとりとして、心からお礼をいいたい。
美味しいお店が1件なくなり、さびしい気持ち。
お気に入りの店は、探そうと思って探せるのではなく出会いであると思っている。
お客様から最後まで「ありがとう」といっていただける仕事を、自分が決めた「最後の瞬間」まで気張っていきたいと思う年度末の金曜であった。
宮川さん、ありがとうございました。そして長年お疲れ様でした。
いつまでもお元気で、そして夫婦お幸せに。