書斎にも春の訪れ。身の回り品も新調したくなる。 そして、出会いや別れが多くなるこの季節には、 気の利いた文具を贈って感謝や激励の気持ちを伝えたい。 機能だけでなく、使うのがもったいない…そんな気持ちになる「ありがたい文具」が日本にはある。
銀座書斎倶楽部を立ち上げるとき、商品構成でこだわった括りがある。それは、「メイド イン ジャパン」。 せっかく日本を代表する銀座で店を開くのであれば、海外からお客様がおいでになったときにも、日本を代表できる商品がある方がよいと。もちろん、日本人の私たちにとってもそれは、感動できる品々でなければならない。 和の文具といえば、文房四宝といわれる紙、筆、墨、硯といった中国から伝わる書の道具を想起されることも多いが、私たちがこだわったのは、もっと日常的で、一般的な用途をもつモノたち。たとえば、ノートや筆記具、ホッチキス、ペーパーナイフ…。 プラスチックなどの化学樹脂で作られたいかにもマシンメイドの機能性優先のものではなく、もっと手づくり感があり、職人たちの息づかいが伝わるもの。手作りなので、大量生産はできないため、あまり売れすぎるとお客様に生産できるまでお待ちいただく「失礼」もあるが、それでもよいといってくださるお客様に選んでもらえるもの。 日本の伝統工芸から生まれ、それを現代風にアレンジしているもの。 見た目に、「日本の文化」を感じることができるもの。書斎机や棚に置いて、安堵感が湧いてくるもの。気持ちがやさしくなれるもの。ギフトであれば、贈っていただいた方の顔や気持ちがほのぼの伝わってくるもの。 現役時代、文具は「仕事の道具」であり、安くて丈夫、使えればよいという価値観であったかもしれないが、趣味の文章を綴ったり、遠くに住む友人からの手紙の封を切ったり、好きな言葉を連ねたり…と、そんな場面では「お気に入りの道具」としてその行為自体が楽しくなるものを選びたい。 そんななかで、とくにおすすめしたいのが、ひとつは「製本職人が作った日本のノート」。この製本ノートは、1冊1冊それに合う紙を裁ち、糊を使い分け、数十ある製本様式から本を綴じていく作業を地道にやり続けている。製本とは本を作る最後の工程であり、そのプロが作る製本ノートであるから、その手ごたえは重く、しっかりとしている。これを閉じる瞬間、「パタっ」という音がするのが小気味よい。このノートには写真のように、きれいな色紙を使ったものが多く、「何に使おうか」「使うのがもったいない」と迷うものも多い。もちろん表紙や小口だけに色を施した、白いノートもあるので用途によって楽しく選ぶことができる。 またこのシリーズでは製本技術を生かしたグラデーションのペンスタンドなどもあり、めがねケースとしても使えたりするのがうれしい。紙である安心感、そして日本の伝統色の美しさ、シンプルで安定感あるデザイン、丈夫な製本。 西洋式のノートとは一味違った日本の職人魂を感じることができる逸品である。 このほか、変わり種の和文具としては、有田焼の文具というのも好評をいただいている。書いたり、綴じたり、切ったりする用途は他の文房具と同じであるが、なぜかぬくもりと気品を感じる。 好みに合わせて、微妙に違う色柄を選び、組み合わせも楽しめる。 使う道具たちを通じて、日本に世界に和みをお届けできれば…。そんな思いでいる。
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